今回は「人材開発支援助成金 事業展開等リスキリング支援コース」をご紹介します。この助成金は、新規事業の立ち上げや事業展開に伴い、従業員が新たな分野で必要となる知識や技能を身につけるための訓練を行う際に活用できる制度です。訓練にかかる経費や期間中の賃金の一部が助成されるため、人材育成を効率的に進めたい事業主の方にとって大変魅力的な制度です。
訓練を受講させた有期雇用労働者を正社員転換すると、キャリアアップ助成金の申請もできます。
令和8年度までの期間限定です
【事業展開とは?】
新製品や新サービスの提供によって新分野に進出すること、事業転換や、既存事業の製品やサービスの製造・提供方法を変更することです。
【DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?】
DXは、デジタル技術を活用して業務効率化を図り、製品やサービス、ビジネスモデルを変革する取り組みです。また、組織や企業文化を変えることで競争優位性を確立することも目指します。
【支給対象となる訓練とは?】
- 訓練の実施形態
- 業務の遂行過程外で行うOFF-JT(Off-the-Job Training)であること。
- 訓練時間が10時間以上であること(eラーニングの場合は標準学習時間や期間で判断)。
受講時間の要件として、eラーニングや通信制による訓練の場合、訓練機関が発行する「受講を終了したことを証明する書類(修了証等)」や「LMS情報(eラーニングによる訓練のみ)」などの書類により、訓練を修了していることを確認します。★ここで重要ポイント1★
~事業場内訓練~
自社で企画・主催・運営する訓練計画により、社外より招へいする外部講師・または部内講師により行われる訓練
講師には、技能検定合格者である、一定期間の指導・講師経験者であるなどの要件があります。
通常の事業活動と区別して実施されていることが必要。~事業場外訓練~
社外の教育訓練機関に受講料を支払い、受講させる訓練
社外の教育訓練機関とは:公共職業能力開発施設や学校教育法による大学、職業に関する知識・技能・技術を習得させ向上させることを目的とする教育訓練を行う団体の設置する施設eラーニング、通信制サービス等による訓練は、事業外訓練で実施する場合のみ対象となります。
- 訓練内容
- 新規事業展開に必要な専門知識・技能を習得させる訓練。
- デジタル技術(DX)やグリーン化推進に必要な知識を身につける訓練。
- 例として、情報セキュリティ、環境対応技術(例:エネルギー効率化やカーボンニュートラルに関する技術)、土木や建築工事にドローンによる測量を取り入れるなど、デジタル導入による効率化・省力化を図るために必要となる訓練などが挙げられます。
- 対象者の条件
- 訓練期間中に雇用保険に加入している従業員。
- 実訓練時間数の8割以上を受講していること。
★ここで重要ポイント2★
・訓練の計画届は、訓練開始1か月以上前までに提出すること。
計画届に不備がある場合、労働局から照会文書がきます。
・就業規則や雇用契約書で定められた「所定労働時間内」の訓練実施であることが必要。
所定労働時間が過ぎた後の残業時間に訓練を行うと、賃金助成・OJT訓練の対象外となります。
・支給申請には、対象労働者の出勤簿や賃金台帳、雇用契約書の添付が求められます。
日頃から整備しておくことが必要です。
・計画届通りに、訓練を受講すること。労働局が抜き打ちで事業場に調査にくることがあります。
・在宅、サテライトオフィスで受講する場合は、テレワーク制度導入について定めた就業規則の写しなどが必要です。
・全計画時間の8割以上の受講がなければ不支給になることは、以前の記事でご紹介したとおりです。
【変更届】
訓練計画の変更には、必ず変更届を提出します。
日時、受講場所など、あらかじめ変更することが判っている場合は、変更の前日(下記の例参考)までに変更届の「原本」が労働局に受け付けられている必要があります。郵送する場合は時間に余裕をもって、できればレターパックで送ったほうが良いです。私は、できるだけ直接持っていきます。
この変更届が提出されずに計画内容を変更すると、その変更した部分については支給対象外となりますのでご注意ください。
例:日時の変更
4月5日に計画していた訓練を4月10日に変更する場合⇒ 4月4日までが期限
4月5日に計画していた訓練を4月3日に変更する場合⇒ 4月2日までが期限
【助成金の支給内容】
- 訓練経費助成 訓練にかかる費用の75%(一部条件では60%)が助成されます。
外部研修機関を利用した場合の受講料、教材費、講師費用などが含まれます。
例:330,000円(消費税込み)の訓練費用の場合
330,000円×75%=247,500円 が助成 - 賃金助成 訓練期間中の賃金の一部が助成されます。(1時間960円、中小企業の場合)
同時双方向型訓練(情報通信技術を利用したオンライン講座で、講義中に質疑応答ができるなど、リアルタイムで双方向のやり取りが可能なもの。)は、訓練校に通学しているものと同様に扱われるため、賃金助成の対象となります。
eラーニングや通信制による訓練は賃金助成の対象外です。
【手続きの流れ】
まず 社内で職業能力開発推進者の選任・職業能力開発訓練計画の策定をしてください。
職業能力開発訓練計画は申請書には添付しませんが、事業場に調査が入ったときに作成していないと、支給が取り消される可能性があります。
①職業訓練実施計画届の提出
訓練開始日の1か月以上前までに各都道府県労働局(兵庫県は助成金デスク、大阪府では助成金センターとなっています)に提出します。
②訓練の実施
くれぐれも、計画通りに実施・受講してください。
受講した労働者には、訓練実施状況報告書を記入してもらう必要があります。
本人直筆の署名欄があります。
③支給申請書の提出
訓練終了後の翌日から2か月以内に支給申請を行うこと。
例:訓練終了が3月15日であれば、5月15日までが申請期限です。
④支給審査のうえ、支給または不支給の決定があります。
決定にはかなりの時間を要します。気長にお待ちください。
助成金を受けるためには、以下の点に注意が必要です。
教育訓練機関との取引において、訓練経費の返金など、実質的な負担軽減が発生しないこと。
教育訓練機関からの金銭の還元や特典がある場合、不正受給とみなされます。
不正受給は誰が関与しても重大な責任が伴います
- 代表者だけでなく、役員、従業員、社会保険労務士、代理人など、支給申請や書類作成に関与した全ての者が対象となります。
- 関与した場合、事業主の「不正受給」とみなされます。
不正受給に対するペナルティ
- 不正に受給した助成金は全額返還が必要です。
- 加えて以下の支払い義務が発生します:
- 年3%の延滞金(不正受給日の翌日から発生)
- 不正受給額の2割に相当する額
その他の影響
- 不正受給が決定すると、5年間(返還完了まで延長あり)、雇用関係助成金の申請が一切できなくなります。
- 公表基準に該当した場合、「事業主名および代表者名」が公表されることがあります。
社会保険労務士・代理人が関与した場合の注意点
- 関与した不正受給額(延滞金・2割相当額を含む)を事業主と連帯して返還する必要があります。
- 不正受給が決定すると、同様に5年間、雇用関係助成金の申請が受理されません。
不正受給は、関係者すべてを不幸にする行為です。
厳に慎みましょう。
最後に
対象となる訓練かどうかの判断が都道府県によって異なったり、地域によってローカルルールが存在するので注意が必要です。
「事業展開等リスキリング支援コース」は、従業員のスキル向上を通じて企業の発展を支える心強い制度です。詳しい申請方法や条件について知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。