助成金が通らないのは“採用前の準備不足”?就業規則と申請タイミングの見直しポイントを解説!
助成金で一番多い失敗──それは「人を雇ってから調べ始めた」ケースです。
助成金を活用したいと考える企業は多いですが、最もよくあるのが「とりあえず採用してから申請を考える」という流れ。実はこの順番、助成金の世界では致命的なミスにつながります。
多くの助成金では、採用前にルールや制度を整備しておくことが求められています。特に、就業規則の整備は助成金審査において重要なチェックポイント。私は、就業規則の整備を単なる書類準備ではなく、「労務環境の再構築」と捉えています。
例えば、「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」では、非正規から正社員へ転換するためのルールが就業規則に明文化されている必要があります。そしてこのルールを、非正規雇用から6か月以上適用した上で正社員転換することが要件。つまり、「採用後に整備」では間に合わないのです。
助成金申請に必要な事前準備とは?
助成金申請のためには、以下のような体制づくりが不可欠です。
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就業規則を法改正に合わせて随時アップデート
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勤怠記録に基づいた、適正な賃金支払い
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労働条件通知書や職務内容の整理と文書化
これらが整っていないと、「せっかく雇ったのに申請できなかった…」という残念な結果になってしまいます。
つまり、助成金のカギは
「助成金を“使える形”に、会社の仕組みを整えているか」どうか。
採用・育成・待遇改善を助成金の制度に合わせて設計している会社は、結果として採用にも人材定着にも強くなります。
助成金は、「使えるかどうか」ではなく「どう使うか」が勝負。計画性と就業規則整備の両輪が揃ってこそ、最大限に活かせるのです。
「うちは就業規則あるから大丈夫やろ」──その油断が危険です。
こんな声をよく耳にしますが、その就業規則、改定したのはいつが最後ですか?
その就業規則は、本当に現状に合っていますか?
厚労省や業界団体が公表しているモデル就業規則。これはあくまでも「ひな型」であり、自社の雇用形態・業務内容に合った内容でなければ意味がありません。
「以前働いていた会社の就業規則を、ちょっといじって使っている」⇐ すぐ止めましょう。
よくあるNG例:
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転換ルールが就業規則に書かれていない(口頭で説明のみ)
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正社員と非正規社員の定義が曖昧もしくは区別がない
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就業規則と賃金規程に整合性がない(例:規則にない手当を支給している)
助成金の審査では、「書類が揃っているか」だけでなく、会社のルール全体が制度に整合しているか、もチェックされます。
タイミングを間違えると「0円」
助成金申請で次に多い失敗は、「申請タイミングを逃す」こと。
たとえば──
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高年齢者を対象とする助成金は、「就業規則改定日の属する月の翌月から」「3か月以内に申請」とルールが明記されています。
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人材開発支援助成金は、「訓練開始の1か月以上前に計画提出」「終了後2か月以内に申請」という複雑な流れ。
このように、ほとんどの助成金は『事前に届け出 → 実施 → 実績報告』という順番が決まっています。「雇ってから申請を考えた」では、要件に間に合わず申請すらできないことも。
つまり、申請成功のカギは
「この雇用に助成金を使えるか?」と考えたその瞬間に相談すること。
逆算したスケジュール設計が欠かせません。
助成金は「経営強化のツール」
成功している会社は、助成金を「お金」ではなく経営戦略の一環として活用しています。
「とりあえず採用してから考える」時代は終わりました。
採用や制度設計の前に、一度専門家に相談してみてください。
「採る前に相談」――それが助成金成功の鉄則です。