両立支援助成金 介護離職防止支援コース
「せっかく採用して、一人前に育て上げた社員が辞めてしまう……」。経営者や人事担当者の皆様にとって、これほど大きな損失はありません。
現在の労働市場は、空前の「超売り手市場」です。転職が容易な現代において、社員の定着(リテンション)はかつてないほど困難な課題となっています。
求人媒体に多額の費用を投じても、必ずしも希望する人材が採用できるとは限りません。
「せっかく投じた採用費用が、ただ溶けていくだけ」という厳しい現実に直面している経営者の方も多いのではないでしょうか。
福利厚生と定着率の関係
こうした状況下で、今注目すべきは「福利厚生と社員の定着率」の関係です。
40代社員が求める福利厚生は「介護支援」
興味深いデータがあります。社員が会社に定着する理由は、年齢層によって大きく異なります。
20代の若手社員であれば、「自己啓発」や「文化・体育・レクリエーション」といった、自身の成長や私生活の充実に関する制度が定着の鍵となります。
しかし、会社の核となる「40代」のベテラン層においては、そのニーズは「医療健康」や「介護支援」へと明確にシフトします。
40代は、仕事では責任ある立場を任される一方で、家庭では親の介護という現実に直面し始める世代です。
この層が「介護を理由に仕事を諦めなければならない」状況に陥ることは、企業にとって教育コストや経験値の面から見て、極めて甚大なダメージとなります。
厚生労働省が支援する「介護離職防止」の仕組み
社員が介護を理由に離職しない仕組みづくりは、もはや「あれば望ましいもの」ではなく、経営戦略上の「早急に取り組むべき課題」です。
厚生労働省もこの課題を重視しており、「介護離職防止支援コース」という助成金制度を通じて、企業の取り組みを強力にバックアップしています。
この助成金を受けるためには、対象となる従業員の家族が「要介護認定2以上」を受けていることが一つの要件となります。
主な支援内容と助成金額は以下の通りです。
主な取り組みと助成金額
1 介護休業取得・復帰の支援:社員が介護休業を取得し、円滑に職場復帰できる体制を整えた場合に支給されます。
5日以上の取得: 40万円
15日以上の取得+復帰: 60万円
まとまった休みを取ることで、介護サービスの調整や生活環境の整備が可能になり、結果として長期的な継続雇用につながります。
2 介護両立支援制度: 仕事と介護を両立するための制度導入
1つ以上の制度導入+20日以上の利用: 20万円(60日以上の利用で30万円)
2つ以上の制度導入+20日以上の利用: 25万円(60日以上の利用で40万円)
| 助成対象となる介護両立支援制度 |
| ・所定外労働の制限 ・時差出勤 ・深夜業の制限 ・短時間勤務制度 ・介護のための在宅勤務制度 ・介護休暇制度(法を上回るもの) ・介護のためのフレックスタイム制度 ・介護サービス費用補助制度 |
3 業務代替支援
休業中の業務をカバーする体制への支援も手厚くなっています。
①介護休業中の新規雇用 5日以上利用で20万円(15日以上なら30万円)
②介護休業中の手当支給等 5日以上利用で5万円(15日以上なら10万円)
③短時間勤務中の手当支給等 15日以上利用の場合のみ 3万円
4 介護休暇制度有給支援
制度導入で30万円(年10日以上なら50万円)
申請手順
1 就業規則・育児介護休業規程の整備:令和7年改正の最新の育児介護休業規程へのバージョンアップ
2 面談シート・介護支援プランの作成:実態を把握し、対象社員と相談しながらプランを作成
3 介護休業を連続5日以上取得:介護休業は、93日を最大3回に分けて取得できます
4 介護した社員が職場復帰:現職に復帰、かつ雇用保険に加入していることが必要です
5 復帰から3か月以内に支給申請
まとめ
「新しい人を一人採用するコスト」と「今いる優秀な社員が働き続けられる環境を作るコスト」。どちらが企業にとって健康的で、投資対効果が高いかは明白です。
助成金を賢く活用しながら、社員が安心して長く働ける環境を整えることは、企業の社会的信用を高めるだけでなく、強固な組織基盤を作る第一歩となります。
介護離職というリスクを、制度導入というチャンスに変えていきましょう。














