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インスタライブに登壇しました

11月1日施行フリーランス新法について

今日、いつもお世話になっている、私のSNS指導の先生が配信されているインスタライブのゲストとして登壇する機会をいただきました。

今日のお題は、フリーランス新法(正式名称を「特定受託事業者に係る取引の適正化等に係る法律」といいます)です。

近年、「フリーランス」と呼ばれる人が多くなってきています。
それに伴い、フリーランスが不当な扱いを受けたり、ハラスメントを受けたりする場面も増えてきていました。
もともと、取引の適正化に係る法律として「下請法」がありましたが、下請法は資本金の要件があり、多くのフリーランスは保護の対象外でした。
それに加え、フリーランスは立場の弱さから就業環境が害されることが多いことから、「取引の適正化」と「就業環境の整備」を目的として成立しました。

以下、インスタライブでお話しした内容となります。


1.フリーランスとは

「業務委託契約の相手方であって、従業員を使用しないもの」とされています。
わかりやすく言うと
「自分で仕事を請け負って、一人で頑張る人」のことです。
具体的には、プログラマー、イラストレーター、ライター、フリーランスのカメラマンという人たちのことです。

この法律の適用者
「特定受託事業者」、いわゆるフリーランスと、
「特定業務委託事業者」、こちらは発注者に当たります。

この二つは、「従業員を使用するか、していないか」で判断されます。

「特定受託事業者」とは、
個人事業主で従業員を使用しないもの
法人であって、自分以外に役員がいない、かつ従業員を使用していないもの

個人か法人かで判断されるのではなく、従業員を使用しているかしていないかで判断されます。

「特定業務委託事業者」とは、要は発注者のことですが
特定受託事業者に業務を委託する者であって
個人であって従業員を使用するもの
法人であって2人以上の役員があるか従業員を使用するもの  となっています。

フリーランス側も発注者側、どちらも、従業員の有無で判断されることになります。

2.フリーランスへの影響について

プラスの影響です。大きく3つあります。
⑴取引条件の明確化
これまで「契約条件が曖昧だった」「突然の変更に対応を迫られた」といった経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。新法では、発注者に「給付の内容・報酬の額・支払期日」などの条件を書面やメールなどの電磁的方法で明示する義務が課されています。これにより、契約段階で条件がはっきりし、トラブルの未然防止が期待されます。

⑵報酬支払いの安心感
新法では、納品後60日以内に報酬が支払われるルールが定められています。支払期日が定められなかった場合は、成果物の受領日が自動的に支払期日とみなされます。たとえば、物品の納品の場合だと検査の有無にかかわらず発注者が物品を受け取った日であり、情報成果物の場合、USBメモリやオンラインでのデータ保存日などが受領日に当たります。これにより、支払いの遅延に悩まずにすみます。

⑶就業環境の改善
妊娠や育児、介護をしながら働くフリーランスの方に対し、発注者が配慮する義務が課されることになりました。
この配慮の対象となる取引は、6カ月以上の継続取引です。これ以外の場合、発注業者には努力義務が課されるのみ、となります。
配慮内容の具体例として
・妊婦健診の日に打ち合わせ時間を調整する。
・出産のため遠隔地に居住する場合、成果物の納入方法を郵送に切り替える。
・子どもの急病により作業時間が確保できない場合、納期を変更する。
・介護のためオンライン就業を希望する場合、オンラインで業務を遂行できるよう調整する。

などが挙げられています。

ハラスメント防止改善措置義務も、発注者に義務付けられました。
対象となるハラスメントとして、 セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント、パワーハラスメント。
どのような場面が想定されるかというと、業務遂行の場面になります。 (例:取引先の事務所、打ち合わせの飲食店、お客さんの家など)。通常、業務を遂行している場所以外の場所であっても、フリーランスが業務を遂行している場所は含まれることになります。

3.フリーランスが備えておくべきこと

フリーランス新法が施行されることで、権利が守られる場面が増える一方、自分自身でしっかりと備えておく必要もあります。ここでは、フリーランスとして準備しておくべき5つのポイントをお伝えします。

⑴契約内容の確認と保存
新法では、取引条件が書面やデジタル形式で明示されることが義務化されました。
どういった内容を確認すべきか?というと
業務内容
報酬金額と支払い期日
納品方法や契約期間

⑵ 自己防衛のための記録
取引条件が記載された契約書やメールは、トラブル時の証拠になります。スクショを撮ったり定期的にバックアップを取る習慣もつけましょう。
契約書以外にも、発注者とのやり取りの記録を残すことも重要です。
メールやチャットの履歴を保存しておく。
曖昧な点があれば書面で明確化を求める。
これにより、報酬の支払い遅延や契約変更が発生した場合に備えられます。

⑶健康と安全への配慮
新法ではフリーランスに対する安全衛生対策や労災保険の特別加入制度も整備されています。
例として、労災保険の特別加入制度への加入があります。
フリーランスでも労災保険に加入できるようになりました。特別加入団体というのものを通じて加入申請することができます。
自己管理の徹底
「個人事業者等の健康管理に関するガイドライン」では注文者が実施する事項はもちろん、フリーランス自身で実施する項目として、危険有害業務による健康障害リスクを理解することや定期的な健康診断の受診、長時間労働による健康障害の防止などを挙げ、個人事業主に対しても実施するよう求めています。

⑷発注者との関係性の見直し
発注者が新法を遵守しているかを確認しつつ、良好な関係を築くことが重要です。
業務リスクや健康リスクに関する情報提供を求めたり、問題があった場合は、冷静に相談や交渉を行える関係性を構築しておくこと。

 ⑸法律家や相談窓口の活用を知っておく
フリーランス新法の内容をできるだけ理解し、必要に応じて専門家に相談することも検討する。
・トラブル時の窓口
「フリーランス・トラブル110番」というものが整備されています。
自分では解決できない、と思ったら弁護士への相談も検討が必要かもしれません。
・ハラスメントについては、発注事業者にハラスメント防止改善措置を義務付ける規定が整備されていますので、発注者に対応を求め、不利益があれば対応を要求しましょう。

4.知っておくと良いポイント

労働者性の判断基準
「偽装フリーランス」
とは、表面上はフリーランスとして業務委託契約を結んでいるにもかかわらず、実際には労働者と同様の条件で働いている状態のことをいいます。

主な特徴は以下の通り
企業の指揮監督下で業務を行っている( 発注者からの具体的指示を受け、業務を遂行している)
勤務場所や時間が拘束されている(特定の場所での勤務や就業時間が指定されている)
他の仕事を受けることが事実上難しい(他のクライアントからの仕事を受ける余裕がない)

実態としてこのような状況にあると、労働者とみなされることになります。

労働者と判断されると、どうなるかというと、労働基準法などの労働関係法令が適用され、最低賃金保障や労災保険などの義務が発生します。労働基準法が適用されるということは、例えば法定労働時間を超えた労働に対しては割増賃金の支払いが必要となりますし、6か月間継続雇用された場合には、年次有給休暇が発生します。

偽装フリーランスの何が問題か
労働者としての権利(最低賃金保障、労災保険、解雇保護など)が得られないにもかかわらず、フリーランスの良い面である自由な働き方もできない「悪いとこどり」の状態になることです。業務委託契約とされていても、実態が「労働者」と判断されれば労働法令が適用されます。

フリーランス新法では、契約形式にかかわらず、実態に基づいて「労働者性」が判断される仕組みが重要視されています。裁判所や労働基準監督署は、発注者の指揮監督の有無や報酬の性質を基に、労働関係法令の適用可否を決定します。
もし、自分が労働者に該当するのでは、と思ったら、労働基準監督署や先ほどお伝えした「フリーランス・トラブル110番」へのご相談をお勧めします。

まとめ

今般、フリーランスに対する保護を目的とした法律が施行されましたが、結局はフリーランスが自分を守るためには、契約書をきちんと交わしたり、契約内容の確認や記録などの証拠を残すなど、自己防衛のための準備が必要となります。面倒でも、契約書をきちんと交わし、発注者との良好な関係の構築がまずは必要となると思います。
それでもトラブルが発生したときには、相談窓口があることを知っておくと安心です。


以上が、インスタライブで話をした内容になりますが、次のこともお伝えしたかったので追記します。

労災保険特別加入ができるようになった
仕事中にケガをしたり、業務が原因で病気になったりしたときに、フリーランスでも労災保険の適用を受けることができます。特別加入といいます。従来から、建設業の一人親方やタクシーの運転手さんなどが主に加入していましたが、今年11月からフリーランスも加入できるようになりました。
労災保険は、基本的には事業主が保険料を支払って、従業員さんが業務中や通勤途中に負傷した場合に、従業員さんが自己負担することなく治療を受けることができる制度ですが、フリーランスも自分で一定の保険料を支払うことで労災保険の適用を受けることができるようになりました。労災特別加入では国民健康保険では対応しきれない、休業時の所得や後遺障害に対する補償もあります。

私は、労働基準監督署の労災課で給付事務を担当していましたので、労災や特別加入についてのご相談も受け付けています。
何かありましたらお気軽にご相談ください。

 

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