助成金活用のヒント

未成年者を雇用・正社員転換する場合の留意点

親権者(両親がいる場合はどちらも)同意の取得が必要

人手不足を背景に、高校生などの未成年者をアルバイトとして採用する企業が増加しています。
しかし、未成年者(18歳未満)を雇用する際には、親権者の同意を得なければならない点に注意が必要です。

仮に親権者の同意を得ずに労働契約を締結した場合、後日、親権者が契約を取り消すことが可能です。
この取消しは、本人の意思(「辞めたくない」という希望)があっても妨げられません(民法第5条)。

なお、民法第5条では以下のように規定されています。

第1項 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。
第2項 前項に違反した法律行為は、取り消すことができる。

親権者は「父母双方」である点にも留意

通常、父母が婚姻中であれば、親権は共同して行使されます(民法第818条第3項)。
このため、雇用契約締結時には、父母双方の同意を得ておくことが原則です。

仮に母親のみが契約に反対し取り消した場合でも、その取消しは有効とされます。
父親が同意していた場合でも、取り消しを阻止することはできません。

先日、18歳未満の年少者を非正規労働者として雇い入れた会社さんが、その後正社員転換してキャリアアップ助成金を申請したい旨のご依頼がありました。
雇入れ時に親権者から同意書を得ていたので、正社員転換時に同意書は不要ではないかとのお申し出があったのですが、このケースでは非正規雇用から正社員への雇用形態の変更が新たな労働契約の締結とみなされるため、あらためて同意書を得ていただくようお願いしました。

労働基準法第58条

第1項 親権者又は後見人は、未成年者に代わって労働契約を締結してはならない。
第2項 親権者若しくは後見人又は行政官庁は、労働契約が未成年者に不利であると認めた場合においては、将来に向かってこれを解除することができる。

上記のように、未成年者の労働契約について労働基準法では「未成年者に不利であると認めた場合に解除できる」と規定がありますが、「契約」行為については民法の定めるところによることになります。

ちなみに労働基準法第57条では15歳未満の児童について、年齢を証明する戸籍証明書や住民票の写しに加えて「親権者又は後見人の同意書」を事業場に備え付けることと定めています。15歳以上の未成年者については、必ずしも保護者の同意書を「備え付ける」ことまでは求められていません。

労働基準法第57条
第1項 使用者は満18歳に満たない者について、その年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けなけらばならない。
第2項 使用者は、第56条第2項に定める児童(原則として15歳未満は使用禁止(第56条第1項)。ただし、許可を得た軽易な業務に限り、13歳以上(映画・演劇は13歳未満も対象)を修学時間外に使用できる(第2項)。)については、修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書及び親権者又は後見人の同意書を事業場に備え付けなければならない。

企業側のリスクと対応策

未成年者との契約が親権者の取り消しにより無効となった場合、

・業務スケジュールの再調整
・教育コストの損失

など、企業側に一定の損害が発生する可能性があります。
これらを防ぐためにも、労働契約締結時に「親権者同意書(父母双方の署名・押印)を取得する」ことが重要です。

労働基準法上の追加規制にも注意

未成年者(18歳未満)の雇用には、労働基準法に基づく制約も存在します。

・時間外労働・休日労働の原則禁止(労基法第60条)
・深夜業務(原則22時〜翌5時)の従事禁止(労基法第61条)
・危険有害業務の就業制限(労基法第62条)等

未成年者に対する規制は一般労働者のものより厳しくなります。上記規制の違反は労働基準監督署から是正指導や行政処分を受けることになりますので、十分にご留意ください。

以下、未成年者採用時の採用フロー組み込みチェックリストです。参考になれば幸いです。

【 募集・面接前】
・募集要項に「18歳未満は親権者同意が必要」と明記
・面接時に生年月日・年齢を確認

【面接時】
・18歳未満の場合、親権者同意書の提出を案内
・同意書のフォーマットをその場で渡す or 後日送付

【内定時】
・親権者同意書を回収(父母双方の署名・押印推奨)
・年齢確認書類(住民票記載事項証明書等)を提出してもらう
・雇用契約書にサイン・押印させる前に、同意書・年齢書類の受領を必ず確認

【雇用契約締結後】
・労働基準法に基づき、勤務時間・業務内容に制約がないか再確認(例:深夜業務NG、危険業務NG)
・労働条件通知書を交付し、本人に説明
・社内に親権者同意書・年齢確認書類を適切に保管

【雇用開始後】
・勤務スケジュールが法令違反にならないようシフト管理
・トラブル防止のため、未成年者本人にも労働条件を改めて説明

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