【前編】空き家を解体して土地を返すだけのつもりが…相続人不在の壁に直面
■ 尼崎市にある義母名義の古い家
尼崎市に、夫の母名義の古い家があります。このたび取り壊すことになり、市に相談したところ補助金が出るとのことで、必要書類を整えて申請しましたが、結果はまさかの「不支給」。
どうやら、補助金が出るのは倒壊寸前レベルの家屋だけだったようです。
■ この家の歴史
ことの始まりは昨年7月。
この家は夫が子どものころに住んでいた家で、夫の父が小学生の頃に不慮の事故で亡くなってしまったため、家族は田舎へ引っ越し。この家はある高齢の親子に貸す形で長く貸家として使われていました。
その親子のうち息子さんが先に亡くなり、昨年7月に92歳のお母様(仮にK子さん)が亡くなったことで、長年の賃貸も終了することに。
家は築50年以上で、かなりガタがきており、貸す相手がいなくなれば取り壊す予定でした。
実はこの家、土地は借地です。
そのうえ、建物の名義も義父のまま。2024年4月の相続登記義務化もあり、まずは義母への名義変更を行いました。(余談ですが、名義が義父のままで固定資産税の納付はなされており、納付書の名義も義父のままでした。)
最終的には更地にして大家さんに土地を返還するため、補助金の申請に至ったのです。
■ 相続人のいないK子さん
K子さんは息子さんが亡くなったあと一人暮らしでした。
遺品を整理し、賃貸契約を正式に終了させるには、K子さんの相続人を特定しなければなりません。実は以前、任意後見契約や死後事務委任契約を結んでおいた方が良いのではと夫と話していたのですが、何となくそのままにしてしまっていました。
K子さんが亡くなったことを知らせてくれたのは、いとこの男性でしたが、彼は相続人ではなく、相続手続きも行えません。
K子さんの生前、入院の手続きやその後の支払いなどもいとこさんが行ってくれていました。
いとこさんの話では、K子さんには身寄りもなく、相続人もいない、とのこと。
そこで初めて、「相続人のいない方の遺品整理ってどうすればいいの?」という壁に直面します。
■ 家庭裁判所に「相続財産清算人選任」の申立て
調べてみると、相続人がいない場合は、家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任申立てをする必要があるとのこと。
【相続財産清算人とは】(裁判所ウェブサイトより) 『相続人の存在,不存在が明らかでないとき(相続人全員が相続放棄をして,結果として相続する者がいなくなった場合も含まれる。)には,家庭裁判所は,申立てにより,相続財産の清算人を選任します。 相続財産清算人は,被相続人(亡くなった方)の債権者等に対して被相続人の債務を支払うなどして清算を行い,清算後残った財産を国庫に帰属させることになります。 なお,特別縁故者(被相続人と特別の縁故のあった者)に対する相続財産分与がなされる場合もあります。』 |
申立てには、被相続人(K子さん)の出生から死亡までのすべての戸籍や、その父母・兄弟姉妹などの膨大な戸籍資料が必要でした。
費用として、800円の収入印紙、郵送のための切手
被相続人の財産を証明する不動産登記事項証明書や、預金残高を証明する通帳のコピー
さらに「予納金」として50~100万円ほど必要という情報もあり、正直、心が折れそうになりました。
【後編 相続人不在の遺品整理と、行政書士としてできたこと】に続く。