前回のおさらい
前回の記事では、固定残業代を求人票に記載する際の3つの必須事項をお伝えしました。
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
- 固定残業時間を超える場合は追加で支払う旨
今回は、この中でも特に重要な「計算方法」について、具体例とともに詳しく解説します。
なぜ計算方法が重要なのか
固定残業代の計算方法を誤っている会社は少なくありません。計算が間違っていると、労働基準法違反として指導を受けるだけではなく、ハローワークで求人票を受け付けてもらえないのです。
正しい計算方法を身につけることで、適切な求人票作成と法令遵守の両方を実現できます。
固定残業代の正しい計算方法【ステップ解説】
実際の計算例を見ながら、ステップバイステップで確認していきましょう。
【前提条件】
- 年間休日数:125日
- 1日の所定労働時間:8時間
- 1か月の想定残業時間:10時間
- 基本給など割増賃金の算定基礎となる賃金:24万円
【計算ステップ】
STEP1: 年間の所定労働日数を算出
365日 - 125日(年間休日) = 240日
STEP2: 年間の所定労働時間を算出
240日 × 8時間 = 1,920時間
STEP3: 1か月平均の所定労働時間を算出
1,920時間 ÷ 12か月 = 160時間
STEP4: 時間単価を算出
240,000円 ÷ 160時間 = 1,500円
STEP5: 時間外労働の割増賃金単価を算出
1,500円 × 1.25(割増率) = 1,875円
STEP6: 固定残業代の額を算出
1,875円 × 10時間 = 18,750円
実際の求人票への記載例
上記の計算に基づいて、求人票にはこのように記載します。
月給258,750円
- 基本給:240,000円
- 固定残業代:18,750円(時間外労働10時間分)
- 時間外手当は、時間外労働の有無にかかわらず10時間分の時間外手当を固定残業代として支給し、10時間を超える時間外労働分は追加で支給します
計算で注意すべきポイント
ポイント1: 年間休日数の正確な把握
年間休日数によって所定労働時間が変わります。自社の就業規則を確認し、正確な日数を使いましょう。
ポイント2: 割増率の種類
- 時間外労働:1.25倍
- 深夜労働(22時~5時):1.25倍
- 休日労働:1.35倍
固定残業代が何の残業を想定しているかによって、割増率が変わります。
ポイント3: 算定基礎となる賃金
基本給だけでなく、職務手当など固定的な手当も含めて計算する必要があります。ただし、家族手当、通勤手当、住宅手当などは除外できます。
ポイント4: 時給換算で最低賃金を下回っていないか
月給(対象となる賃金)を所定労働時間で割った時給が、最低賃金を下回っていないか必ず確認しましょう。
月給制の場合の確認方法: 月給240,000円の場合
- 1か月の所定労働時間:160時間
- 時給換算:240,000円÷160時間=1,500円
この金額が、都道府県の最低賃金(例:大阪府1,177円、2025年10月16日から適用・兵庫県1,116円、2025年10月4日から適用)を上回っている必要があります。
また、最低賃金の計算には、算入する賃金(例:住宅手当など)と除外する賃金(例:家族手当や通勤手当など)がありますので、計算する際に注意してください。
近年は最低賃金の上昇ペースが大きいため、以前は問題なかった給与設定でも、気づかないうちに最低賃金割れになっているケースが増えています。毎年10月(今年は都道府県により適用時期に差があります)の改定時には必ず確認しましょう。
固定残業代制度の法的要件
計算方法が正しくても、以下の要件を満たさなければ認められない場合が多いです。
明確区分性
基本給と固定残業代を明確に区別して支払うこと。給与明細でも分けて記載する必要があります。
対価性
固定残業代の額が、実際の残業時間に対する対価として合理的であること。
労働時間の上限規制
労働基準法の上限規制内に収まる設定にしましょう。これを超える長時間労働を前提とした固定残業代は、公序良俗違反として無効とされる可能性があります。
超過分の支払義務
固定残業時間を超えて労働した場合、必ず超過分の割増賃金を追加で支払う必要があります。これは法律上の義務です。
チェックリスト:自社の計算を確認しよう
以下の項目をチェックして、自社の固定残業代が適切かどうか確認しましょう。
年間休日数から正確に所定労働時間を算出している
割増率が正しい(時間外1.25倍、深夜1.25倍、休日1.35倍)
算定基礎となる賃金に含めるべき手当を漏れなく含めている
基本給と固定残業代を給与明細で分けて記載している
固定残業時間が上限規制の範囲内である
固定残業時間を超えた場合の追加支払いルールが明確
まとめ
固定残業代の計算は、年間休日数から所定労働時間を正確に算出することがスタートです。
そこから時間単価、割増賃金単価と順を追って計算すれば、正確な金額を導き出せます。
正しい計算方法で固定残業代を設定し、求人票に適切に記載することで、応募者との信頼関係を築き、ハローワークでもスムーズに受理してもらえます。
ハローワークで受け付けられ、公開されている求人票は、ハローワークから法令順守を認められた、要は「お墨付き」です。
「自社の計算が本当に合っているか不安」「求人票の書き方を相談したい」という方は、ぜひ社会保険労務士にご相談ください。
貴社の実情に合わせた適切なアドバイスをさせていただきます。
お問い合わせ 求人票の作成や固定残業代の設定でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
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